石鳥谷熊野神社例大祭いしどりやまつり2014

 



 他に貪欲に学ぶ組もあり、独自の色を出す組もあり、要は石鳥谷が山車について多彩な地域ということである。
 


下  組 大伴黒主 / 小町桜(歌舞伎「積恋雪関扉」)

圧倒的存在感、「衝撃」に限りなく近い印象がある。黒衣装・青隈・鉞…すべて異様で、いつまでも見入ってしまう

星の並びに 護摩木を求め まさかり黒主 桜伐り
(見返し)大伴黒主 天下を狙う 野望を砕く 返り花

※南部流風流山車の『関の扉』

 
小道具大道具良く作ってあるが、人形の動作が単純なのが惜しい

 六歌仙が出てくる歌舞伎「関の扉」は、展開が難解なことで有名な芝居である。大伴黒主はなぜか舞台の上では謀反人・悪役で、小野小町が正義の味方との設定。背景は岩でなく、大きな桜の幹になっている。
 いやはや、内容が全く分からずともこの異様さ・背高で怖い化粧に黒衣装、斜め上に鉞なんていうのに釘付けにされてしまうのである。黒衣装の脇から満開の桜が出てきた日には…。そういえば石鳥谷の山車って確かに、こういう引き出しを持っていた。





上 若 連 本能寺 / 白拍子花子

色味豊かで美しい反面、戦場ものとしてはやや鬼気に欠けるきらいはある。芝居調の美しい本能寺

覇道なかばで くだけし野望 さだめ儚き 本能寺
あるじ守りし 覚悟を胸に 蘭丸忠義の 鑑なり

※南部流風流山車『森蘭丸』

 
定番ながら実に美しい見返し、背景の蓮が寺院を思わせる

 作り尽くされた感のある定番演題であっても、工夫のしどころが無限にあるのが武者ものの良いところ。今回の見どころは、何といっても潰し武者の刀の振り方。こちらへ倒れてくるような迫力とともに、この組らしい品と華が楽しめた。

両者の距離感が目一杯取られていて非常に見ごたえがする


 





中  組 千本桜 碇知盛 / 典侍局

左右いずれからも飽きの来ない見栄えであったし、血の化粧も上手い。綱と背景にもう少しだけ華が欲しかった

碇知盛 この世のかぎり 見るべきものは すべて見ゆ
(見返し)夜のとばりの 波間に伏せる おさなきみかど 守らんと

※南部流風流山車の『碇知盛』

 
着物も背景も上手、何より見返しにこの趣向を取る高尚さが好きだ

 壇ノ浦を生き延びた平家一門が大物浦で怨霊を装い、都落ちの義経を狙う。実は碇知盛が最初に山車に採られた際の趣向は武者でなく、この千本桜の知盛なのである。
 見返しの典侍局は安徳天皇の乳母で、知盛が幼帝を義経に託して入水する際、ともに命を絶つ。雅な女官姿・背景の海が、平家の悲愴を「風流」として引き立てる。

雨降りは悲しいが、山車に鬼気が宿り見栄えは増す







上和町組 鵯越 / 巴御前

鎧や馬具の色で山車を豪華に、華やかに見せている。馬の下の岩場を笹で明るく見せたのも効果的。顔と体のバランス・肉付け不足が残念

馬も恐れる ひよどり坂を 義経機転の 奇襲ぜめ
(見返し)男勝りの 薙刀かまえ 香る巴の あで姿

※南部流風流山車『義経一の谷』 ※南部流風流山車『巴御前』

 
人形が小ぶりで痩せているのと、背景が単に簾なのが気になる。女武者の鎧姿は戦場にあってこそ

 義経が一の谷合戦に伴った愛馬は千厩の産で「太夫黒」といい、その名の通り黒い馬であったという。だが逆落としは黒い岩で坂を作るから、馬が黒いと色彩が分かりづらくなる。この山車の素晴らしさは「黒馬で逆落としを華やかに」との難題に果敢に挑み、見事に一定の答えを出せているところだろう。
 見返しは巴御前で、立札には「武将」と記しつつ振袖を着せ、「女武者」の演出を試みた。





西  組 釣鐘弁慶 / 手古舞

鐘が弁慶の体にすっかり隠れてしまっているのはもったいない。色は明るくて良いのに

※南部流風流山車『釣鐘弁慶』

 
背景含めて真似られれば最高であった

 パレード解説によれば、弁慶は松江に生まれ「鰐淵寺」という寺で修業し、源平合戦の後はふたたびこの寺に身を寄せ、一夜で釣鐘を運び込む武勇伝を残したとのこと。
 表は沼宮内・見返しは盛岡の秀作に忠実に学んだことが見て取れる。






※正式な演題名はこちらで


※各山車について管理人の思うところは、下記機会にてお話しいたします。

岩手県立博物館日曜講座「県博で山車を見る会」 講師:山屋賢一
11月9日(日)13:30〜 岩手県立博物館(盛岡市上田松屋敷34)講堂にて

管理人連絡先:yamaya@iwapmus.jp / sutekinaomaturi@outlook.com
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