沼宮内稲荷神社例大祭岩手町秋まつり2007
毎年10月第1金・土・日曜日に岩手町沼宮内で運行される新町組・大町組・の組(野口町)・愛宕組・ろ組(苗代沢)による5台の山車。祭典期間中はこのほかに、創作太鼓屋台も運行されている。沼宮内の山車の特色は、低めに付けられた牡丹、片側3段に飾られた松、松を突き抜けて咲く玉桜、岩肌に仕立てた立ち岩が織り成す古風な風貌であり、平成に入って盛岡市内の山車が多く失ってしまった雰囲気を、今に伝えている。人形は大振りで躍動感に富み、製作技術が非常に高い。囃子は以前盛岡の仙北町が囃していたような、穏やかな拍子のものであり、5つの組でほぼ大差なく伝承されている。初日と最終日は神輿について午後1時から合同運行が行われ、中日には祭典の佳境といわれる夜間パレードが夜6時から8時過ぎまで行われる。
★管理人撰 沼宮内一番★
さきの怪童 足柄山を 出でて頼光 四天王
踏み込む金時 魔物のねぐら 葛城山の 蜘蛛退治
日本最強の妖怪「土蜘蛛」は権力に虐げられた弱者たちの怨みの結晶、それを退治する頼光四天王は勇ましくもあり、どこか苦々しくもあり…。坂田金時は日本人なら誰でも知っている足柄山の金太郎、怪力漲る容貌は赤ら顔で表現され、魔除けの朱ということで縁起を担いでいる。盛岡山車のご先祖様、江戸の神田山王祭り絵図から構想された珍しい演題。
一歩半歩と とどかぬ先の 九郎判官 蝶の如
逃れ義経 追う教経の すがた儚く くずす浪
2体の八艘飛びは能登守教経をこそ主役とする構図であると、私は思っている。秀才と天才のあらそい、秀才がいかに努力を重ねても超えられない壁。波間を跳ね回る天才義経をどうしても捕まえられない秀才教経の悔しさ。鬼の形相が無念を語れば語るほど、きらびやかな義経の姿が際立つ。「この世の中に源平の戦いほど美しく、そして悲しいものは無い」とは、古の山車名人の至言。
萩の大乱 謀議をやぶり 打つや化身の 大鼠
揺るがぬ姿は 乳母の意地か 呑んだ涙に 血が滲む
我が子の苦しむ姿を見殺しにしてまで手に入れた謀反の連判状、忠義といってもあまりに酷な世の習いに政岡は思い悩んでいる。曲者が現れればすぐさま長刀を取らんと白装束に襷をかけて寝ずの番、しかしふとまどろんだ隙に怪しい影が連判状を盗み出してしまった。耳を澄ませば闇夜にばたばたと気ぜわしい物音、恐る恐る灯明かざして床下を見れば、照らす先には見るもおぞましい大鼠の妖怪、口にしっかと巻物を銜えて不気味に蠢いている。是を踏み据え剛毅一喝、兜割りの鉄扇をかざす宿直の豪傑「松前鉄之助」の勇姿。
わたる獣が 四つ足ならば 越せる道理と 馬を繰る
奢る平家に 奇襲をかける 軍神九郎の 大勝負
義経一の谷、鵯越の逆落としは岩手町の山車組にとってとりわけ思い入れの深い演題である。なにしろ、昭和50年代の新町組、平成に入って川口下町山道組が東京大銀座祭りに出場、脚光を浴びたときの演題である。沼宮内の下り馬は県境を超えた好評を得て、沼宮内・川口山車のカラーは一気に武者傾向を帯びた。本家盛岡にも「な組」としてたびたび出張した岩手町の馬、「風流 義経一の谷」(平成10年奉納)の評判は記憶に新しい。県下に名手と名高い沼宮内野口町にとって、或る意味一番作りにくい、ハードルのきわめて高い演題と云えるかもしれない。
軍師山本 奇策の隙を ついて紛れる 夜の霧
武田一蹴 戦の神の 姿さながら 阿修羅王
戦国大名数ある中でも上杉謙信は神懸り的な戦上手であり、川中島で十数年も争ったのはいかに双方が強かったかの証である。妻女山に1ヶ月近く篭もりきりの謙信を、山本勘助は「きつつき戦法」で挟撃しようとするが、謙信はさらにその裏を書いて全軍の馬に轡をかませ、まったく物音足音立てることなく一夜にして山を下った。鞭音粛々(べんせいしゅくしゅく)夜河を渡る上杉軍、翌朝の八幡原、朝靄が晴れると全軍が毘沙門経を唱えて武田本陣前に結集している。驚いた武田の兵卒を一蹴し、謙信は先陣を切って信玄のもとへ馬を蹴立てた。
→各山車写真に添えた音頭上げは、筆者が山車を見て感じた思いを詠んだでたらめな歌詞です。
山車組
表
裏
大町組
妖し物の怪 土蜘蛛変化 挑む金時 綱で捕る
化ける妖怪 金時退治 かざす荒縄 蜘蛛を捕るきたん鯉捕り 滝棲む主と 鬼若博闘 散る飛沫
ろ 組
清和源氏の 薫りも高く とぶや逆巻く 浪の上
九郎義経 八艘飛びの その名も今に 壇ノ浦
新町組
伊達家を守る 松前が 正義のちから 不義をうつ
昔なつかし 先代萩に 勇名轟く 鉄之助秋の実りを 大黒舞に 踊りださせる 祭り山車
五穀豊穣 祈りを籠めて 舞うや大黒 福を呼ぶ
の 組
馬も恐れる ひよどり峠 めざすは平家 一の谷
人馬も通わぬ 鵯越を 九郎義経 逆落とし
平家のまもり ひよどり坂を 逆さに落ちる 奇襲ぜめ橋に牛若 夜露の五條 笛を慕いし 秋の月
今宵牛若 名残の笛に 五條をわたる 秋の風
愛宕組
鞭声粛々 夜河を渡る 一剣みがき 敵の陣
大太刀かざし 怯むことなく 蹴散らす姿 勇ましく
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