岩手県八幡平市 大更八坂神社例大祭山車行事(7月15日に近い日曜日)

岩手県八幡平市 大更八坂神社祭礼

 



奉納相撲

 盛岡山車は主に秋のお祭りに出るものですが、八幡平市西根地区では何件か、真夏に盛岡型の山車を出すお祭りがあります。中心市街に当たる大更(おおぶけ)の場合、西根町山車同志会が八坂神社の祭典に山車を出します。運行開始は9時、夜は7時までで、お祭りの日の日中はずっと町内を巡ります。照明機能は無く、夜間の運行はありません。以前は組み上げ解体とも祭りの前後1日で行っていた為、カケスはなく一般の工場の車庫からの出発でした。現在は市街地への入り口付近にカケスを作って、朝の8時に小屋出しをするようです

平成19年『風流 五条大橋』(提供写真)

 同志会の山車は長らく借り上げで、人形その他は盛岡観光協会で前年の盛岡祭りに出たものを使います。昔は石鳥谷から持ち込んでいたと聞きましたが、ここ数年ではもっぱら盛岡観光協会およびその提携団体(一時期のの組など)の作品を持ち込んでいるようです。囃子も音頭も盛岡とほぼ同じで、この土地ならではの個性的な部分はほとんど見当たりません。何回か見に出かけて気付いた個性は、あげ太鼓や止め太鼓などの「マッチャ」があまり使われないこと、歩み太鼓に移行する掛け声の時に太鼓の端を早太鼓ほどの早いリズムで叩くこと…等です。袢纏は3種類くらいが引き綱に交じっていて、有名な地酒「鷲の尾(わしのお)」の宣伝入りのものもあります。
 引かれる山車も運行形態も、愛好家にとっては目新しさを欠くものではありますが、逆にこのオフシーズンに盛岡の定型を徹頭徹尾守った山車が出るのは尊いことなのかもな、と思うようになりました。音頭上げの名人がいて、絵紙を出して町内を花もらいに回る…、そもそも山車の借り上げが「名作の出張」であると考えれば、このように盛岡の作法を完全に再現することこそが、大更における山車巡行のもっとも大事な部分なのかもしれません。山車1台のためパレードは無く、神輿も動かないので渡御行列もありません。観衆が一時に・一か所に集まるようなピークは無いものの、「次はここを通るかな」と家々から人が出てきて、山車を喜んで迎える姿は何とも言えない、良いものです。

平成20年『見返し 羽根のかむろ』(提供写真)

 大体朝の10時半頃、一回目の休憩を終えた山車が八坂神社(大更公園)の向かい側から出発します。神楽やさんさ踊りを目当てに神社にいると、遠くに聞こえる山車の太鼓に心が躍ります。山車は住宅地を回った後、休憩をはさみつつ昼過ぎに商店街に戻ります。音を頼りに探すのも楽しいものです。
 神社境内は子供たちの奉納相撲で賑わっており、観客もたくさんいて応援も派手で、相撲は健全な娯楽であるなとしみじみ。何より、見る人もやる人もたまらなく楽しそうでした。平舘の岩手山神社山伏神楽・西根さんさ踊りなど郷土芸能は専ら午前中の奉納、午後からは歌謡ショー・民謡などがメインになり、夜までにぎわうようです。的屋さんも神社下の広場に密集していて、昔ながらの村祭りの風情を醸しています。
 夕方に訪ねた時もやはり神社境内に非常に活気があって、楽しい雰囲気でした。夕日を正面に受けながら進む山車の姿はなかなか美しく、懐かしい気持ちになりました。注連縄は紅白の紐をよじった華やかなものが町内をめぐっており、所々に祭り提灯や造花がかかっています。

 祭日の八坂神社で見られたのは、自然に町の人々が神社に集まり賑わうという昔ながらの風景でした。280年余りにわたり町の鎮守として栄えてきた八坂神社、山車の登場は平成15年で27台目とのことですが、祭りの雰囲気自体にはそれをはるかに上回る年季を感じます。今後も町の人々に愛されて、この素朴なお祭りが続いてくれることを願ってやみません。
(平成15・17・19・26年見物)



3種くらいの袢纏が混じる引き綱(平成26年)

<詳細日程>毎年7月15日
am9:00頃  山車出発・大更駅前にて記念撮影
am9:30頃  山車、八坂神社奉納
am11:00頃  八坂神社境内にて芸能奉納・奉納相撲少年の部(地区対抗)
pm2:00頃  山車の大更メインストリート運行・西根さんさ街中披露
pm6:00頃  練り神輿出発(大更駅前 2基)
pm7:00頃  山車納車・神社では奉納相撲成人の部

アクセス:
@JR花輪線大更駅下車 八坂神社までは徒歩10分程度
A岩手県北バス平舘方面行き乗車、八坂神社前は「大更公園」にて下車
※おらほの温泉(元 西根温泉ゲンデルランド 入湯料500円)が見物エリアのすぐ近くにあります、1時間に1本程度バスあり

文責・写真:山屋 賢一
(掲載写真:@八坂神社境内・奉納相撲 A平成19年『五条大橋』読者提供品 B平成20年見返し『羽根の禿』読者提供品 C複数の袢纏が混じる引き綱)

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