盛岡八幡宮例大祭2011

 



 盛岡らしからぬ(笑)、斬新でストレートな面白さ満載の八幡山車でした。広く北東北を回っていて思うのですが、盛岡山車にはきちんとした定型があって、その定型の中で大屋根を作ったり化け猫を上げたりするからこそ破戒力というか、効果が増していく。何でもアリではないからこそ盛り込む趣向が活きる、それこそが盛岡山車の魅力なのだということを、改めて感じた秋祭りでした。


み 組鍋島の化け猫騒動 / 三ツ石さんさ

今回また一つ、憧れの趣向に出会えて嬉しい。たしかに大猫が上にいる山車は面白かった。愛嬌のあるかわいい猫だが、大きいのでそれなりに怖さやインパクトがあったし、胴体が伸びたり目が赤く光ったりするのだからなおさら怪談らしく見える。武者は地味な服装にして思いきって下半身を沈めたのが効果的、あくまで化け物を主役に据え面白いことを丁寧に、効果を考えながらたくさんやれている楽しい山車であった。見返しは、さんさ踊りの背景に三ツ石を飾ったのが面白い

静まり夜更けに あらわる猫を 槍で射止めし 本右エ門
肥前鍋島 お家の騒動 今に伝わる 怪談記

※演題紹介

 
八幡下り終盤、伸びる猫

 化け猫の山車は昭和30年代に岩手県北部で若干試みられた形跡があり、新聞報道等にこの作品のような猫を上に飾った山車が幾つか見られます。み組は昔から化け物の山車を好み、観衆の度肝を抜いてきました。今回盛岡初登場となる猫騒動の山車も大いに観客を沸かせ、新たな山車の魅力を切り開くものになったと思います。

三ツ石鬼を懲らしめ祝い さんささんさと舞い踊る
どこから見ても猫が魅力的

 




か 組楼門五三桐 / 真柴久吉

喝采の中、盛岡駅前を午後五時ころ通過

鷹が知らせる わが身のさだめ 二人の父の 仇を討つ
黒のどてらに 百日かつら 五右衛門見得の 五三桐

※演題紹介

 「絶景、絶景」と南禅寺山門の桜を愛でる石川五右衛門、不意に現れた鷹の咥える手紙を読んで、そんな浮かれ気分は一蹴された。「天下人真柴久吉は、生みの親も育ての親も殺した我がカタキ。」おのれ久吉と五右衛門がその面相を思い浮かべると、山門がぐぐぐとせり上がって、その下に巡礼姿の久吉が現れる。この久吉はあくまでも五右衛門の頭の中に浮かんだ久吉であり、小憎らしくも五右衛門が投げつけた小柄を片手の柄杓で器用に受け止めた。宿敵同士の五右衛門と久吉、山門の上下でにらみ合う「天地の見得」。歌舞伎狂言数ある中でもとりわけ豪華な演出で知られる一幕である。


巡礼の秀吉、八幡宮参集時


 楼門の石川五右衛門は沼宮内・石鳥谷を経て3回目、作られる度ごとに新たな解釈が加えられてきました。どの作品についても重点は「南禅寺の楼門をいかに豪華に切り取るか」にあり、今回は舞台下方に大きく甍を突き出す迫力満点・豪華絢爛な山車となりました。作り手の創意と努力に脱帽です。

大屋根は観客の度肝を抜く圧巻であり、遠望すると船のように見える迫力であった。山車が方向を変える時にとりわけ映え山車の動きをものすごく大きく見せたし、近くで見ても細部まで作り込まれており配色も派手で、人形の地味さを十二分に補っている。見返しも顔の良い人形で色合いも良く、上品さを保ちつつ面白く仕上がっている。
近くで見れば細部もきっちり

 




南部火消し伝統保存会景清 / 八重垣姫

今回唯一、山車人形そのものの魅力で勝負できていた山車である。表は顔が良いし体勢も柱が重そうで良い、腕が太く力持ちに見えて立派である。見返しも顔が良く、色合いも淡くて綺麗。背面に幟を立てなかったので、見返しの美しさにきちんと浸れた

牢屋蹴破り 阿古屋を助け 格子掲げて 仁王立ち
平景清 剛勇ふるい 雑兵蹴散らす 牢やぶり

※演題紹介

※演題紹介(見返し)


兜は前に倒す

 保存会が後世に伝えていく南部火消しの伝統は「纏」「梯子乗り」「裸参り」そして「山車」。今回は震災を機に奉納を自粛する組が幾つかありましたが、火消し保存会は逆にこの年だからこそ山車を出したわけで、景清牢破りには災害という困難を打ち破ろうとする祭り人の情念を感じます。

各分団の半纏が一堂に会した華やかな引き綱








盛岡観光協会義経八艘飛び / 静御前

盛岡名物仁王さんの前を通過

智将義経 身ごなし軽く 勇将教経 苛立てり
(見返し)九郎恋しや 静の歌が 八幡の杜に 染み渡る

※演題紹介※


舞に込めたる静の想い 九郎慕いて舞い踊る

 盛岡観光協会の山車は歌舞伎の上手な分団が主力となって作っていますが、今回はあえて作り慣れない武者ものに取り組みました。作り尽くされてきた義経の八艘飛び、烈火の如く義経を追う能登守教経と、逆巻く波を飛翔する九郎義経。演題の魅力を根本から捉え直して誕生した「斬新な定番」です。

時は元暦弥生の月に 雌雄決する壇ノ浦
非常に精巧に、独自の美意識を貫徹して作られた八艘飛びである。槍の構え方や義経の跳ぶ姿勢、人形の配置・顔の美しさなど見るべき部分が非常に多く、角度が変われば表情が変わる面白い作品であった


※貸出先にて:葛巻町下町組・北上市黒沢尻十二区
「葛巻秋祭り」牡丹や桜の色味が変わると静御前がすごく幽玄に見えましたし、飛び出す義経は吊り提灯の燈る中を進むととても効果的

「黒沢尻火防祭」手押し車先行の優雅なお囃子による運行。飛び出し方は控えめながら、例年より丁寧な造りで色味がとても綺麗でした





い 組碁盤忠信 / 吉野山静

定例の盛岡劇場前(14日午前)

奥州落ちの 義経助け 身代わり享けて 吉野山
碁盤構えて 北条方の 寄せ手蹴散らす 歌舞伎見得

※演題紹介


義経慕い吉野の山へ 静の道は恋の道

 い組は5年ごとに同じ山車を繰り返し作るということを今年も続けていますが、単に同演題というだけでなく、構図も絵紙も変えずに「同じものを目指して」作っています。それなのに毎回違いが現れる、近年はそんな違いがどこに出てくるかを楽しみに、い組の山車を眺めています。

痩身傾向ではあるが、きちんと勇みを感じる忠信であったし、藤がたくさん下がって松の単調さを緩和するなど山車そのものも均整がとれていて美しい

 




さ 組草摺引き / 舞鶴

朝比奈の手が上手い

赤き隈取 情けの花に 剛勇無双の 曾我絵巻
五郎朝比奈 競いし姿 煙くらべか 富士あさま

※演題紹介


娘盛りをかぶきて花に 留める舞鶴 力紙

 平成元年以来の登場となる、五郎朝比奈の草摺引きです。朝比奈三郎は蟹隈だったか猿隈だったか、いずれ楽しい道化の隈取りです。真ん中の鎧を力自慢の二人が引き合う華やかな歌舞伎山車です。

普通に撮るとこんな感じ








と 組鬼若丸 / 中野りんご娘

八幡通り裏を足早に

八尺大鯉 鬼若丸が 単身挑み とどめさす
(見返し)りんご娘の 絣の袖に 摘まれた籠の 赤い玉

※演題紹介


半纏には「がんばろう岩手」

 鬼若丸は武蔵坊弁慶の幼き日の姿。比叡山の池の主を単身で仕留めた「鯉つかみ」の場面は、盛岡山車に長らく引き継がれてきた縁起の良い演し物です。鯉の配色は赤や黒など様々ありましたが、今回は白い鯉を舞台いっぱいに暴れさせました。








※正式な演題名はこちらで


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