小鳥谷八幡神社祭典

 

 平成20年に復活した小鳥谷まつりは、一戸まつりに次ぐ「第二の一戸の山車祭り」として、近年盛り上がりを見せています。いわて銀河鉄道「小鳥谷駅」から少し歩くと、往年の街道であろう見通しのきく一本道が南北に広がり、遠くからお神輿の行列がやってきます。小鳥谷の山車は音頭上げや門付けを大変大事にし、街路の一軒一軒に丁寧にお祝いを述べながら進んでいきます。以下、簡単ではありますが、平成21年見物時点での小鳥谷の山車行事について、概要を記しておきます。今後数年の間で、下記の状況からいくつか変化が出てくるかもしれません。

 

小鳥谷山車の行列

山車行列先頭
 山車の先頭には大きな高張提灯を1組掲げ、一戸山車にも共通する「お供え」(酒・折敷などをささげた少女)が綱の前を歩き、金棒引き、引き子、山車…と続く。お供え持ちの少女は半纏・手古舞装束ではなく、黒い振袖に襷を掛け、派手な帯を締めた非常に豪華ないでたちをしている(2組でほぼ共通)。小鳥谷におけるお供えおよび金棒引きは、良家のお嬢様や年頃の娘さん達を観客にお披露目する意味を持つともいわれ、昔はお祭りが縁で成立した縁談もあったらしい。現在もこの役目は若い独身女性に限定されており、お通りが終わって門付けに入ると随行しなくなる。
 野中若者連の金棒引きは従来のスタイルに近い浴衣姿で、金棒を持たずに付属する綱だけを持ち、金棒を引きずって歩く。


 

 

小鳥谷山車の台車と飾りつけ・絵紙
 一戸町の山車組に依頼し、人形・装飾花など一式を借り上げる。台車ごと借りているところもある。夜間は電飾し、初日は小鳥谷駅前での競演、最終日はに組が夜6時半、野中も7時ころまでは運行を行う。祭典時期の日の入りはおおむね5時半くらいであるから、両日とも夜間の電飾を見物できる。絵紙は2組とも作成、音頭を上げた上で各戸に配布する。


に 組
 一戸町の本組から台車・牡丹・山車人形を借り上げて飾り付ける。演題名を記す前後の演題立て札は組自前のものに付け替えるが、これは珍しい江戸文字勘亭流の手書きの札である。復活時の平成20年は、他の借り上げ先との関係もあって新作人形を上げたが、翌年は一戸祭りに上がった人形を一部衣装を付け替えるなどして飾っている。昭和45年の山車行事断絶以前は、本組の山車人形を一から組みなおしたり、着物を自作したり構図を変えたり…という工夫が加えられていたらしい。牡丹を除く装飾花はに組の自作、おおむね本組の型通りに作ったものだが、藤は小鳥谷独特の形であり、背面には本組では使っていない真っ赤な紅葉を飾っている。「消防第3部」「に組」の提灯を一組ずつ、見返し部分に付ける。絵紙は本組とは違う原画を使い(自前で描いたもの)、音頭も別のものを作り、広く盛岡エリアで一般化されている意匠の帯をつけて配布する。



野中若者連
 一戸町上町組から装飾一式を借り上げる。台車は従来上町組が使っていたトラック台車と思われるが、不明。花書きを滝波部分に張り出して運行する。絵紙は上町組と同じ原画をA3サイズの紙に黒刷りして、色の入った帯をつけて配布する。

仁昌寺に組『山中鹿之助』

 

 

小鳥谷山車のお囃子・掛け声


に 組
 復活当初は太鼓のみで「元気出せ、声出せ」という掛け声だったが、平成21年には一戸の本組と同じ節の笛をつけ、掛け声も「やれやれ」だけになった。山車を止める際は停止拍子を打つが、音頭上げのときは歩み太鼓を止めてそのまま音頭に入る。復活当初は盛岡風の停止拍子を打っていたらしい。



野中若者連
 平成21年時点では太鼓と鉦のみのお囃子、鉦はテビラガネで小太鼓に合わせて摺っている。掛け声は、一戸の上町組とまったく同じ。大太鼓の叩き手の多くは「七つ物」の法被を着ている。


 

 

小鳥谷山車の音頭
 お通りの出発時にどちらの組も音頭上げをするが、お通りの最中は上げない。門付けの際は1軒につき2曲以上上げるのが普通。



(音頭の具体的な流れ)

よおいわえ
(やれ、こりゃわのあせ)
やれよはえ
一句目「早瀬の岩に 
ええい、えええい
(よ)
二句目「戸板を立てて 
(やれこのせ)
三句目「怪力無双の 
ええい、えええい
(よ)
四句目「あゆのすけ 
ええい
(よーいよい、よいさよいさ、よーいさあのえ)


野中若者連『加藤清正』
に 組
 基本的には、一戸流だが、歌い終わりの「やれこのせ」は無い。音頭から歩み太鼓への以降部分は、小太鼓だけでたたく。門付け時は、通りを登ったり下ったりしながら両側に上げる。

(歌詞の例)
とどろく車の 音を聞けば 老いも若きも 出て騒げ
流れ早川 戸板を背負い 怪力無双 鮎之助
我に授けよ 七難八苦 月夜に拝す 鹿之助

※演題音頭は、貸出先の本組では使っていない歌詞。に組で新たに歌ったものと思われる。


野中若者連
 基本、一戸流で、上町組とそっくりである。歌い始めに扇子を大きく振るのが特徴。音頭を「歌う」人が綱から離れ、各戸の玄関前まで行って音頭上げをする。この時の音声がワイヤレスマイクを通して山車のスピーカーから流れ、山車は玄関前の音頭にも連動して合いの手や太鼓を入れる。本隊との連動が見られる点で、盛岡広域で見られる「後付」とは違う。
 お宮の前を通るときは必ず音頭を奉納し、曲は2曲以上、歌い手を代えながら上げる。最後に歌詞からいきなり歌い始める「掛け声頼むぞ」(一戸の橋中組がパレードで披露する、音頭の後付部分を拡張したようなもの)を上げる。
 音頭の四句目が7文字を前提とした節となっており、5文字の音頭を調子を整えて7文字に歌い替えている。

(歌詞の例)
このやお店の 掛けあんどん見れば 商売繁盛と 書いてある
文禄元年 世にも名高き 加藤清正 虎退治 
(貸出先そのままの歌詞)
掛け声頼むぞ 野中のともよ 引けよ引け引け 野中の花車

※小鳥谷まつり八幡神社祭典には、山車のほかに「小鳥谷七つ物踊り」「高屋敷神楽」が出場、お通りのお供のほか、郷土芸能パレードや各戸門付けを行っている。

 

文責・写真 : 山屋 賢一(平成21年9月27日見物)

※参考までに一戸まつり(八坂神社稲荷神社例大祭)の状況を調べたい方はこちらへ

※南部流風流山車(盛岡山車)行事全事例へ

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