※県名標記のないものは全て岩手県の芸能です
●三妙院系山伏神楽
岩手では県北部に伝わる山伏神楽の総称で、修験者の三明院、吉祥院らが伝えた。
特色として、杵舞や盆舞といった曲舞(曲芸要素をもった舞)の発達が挙げられる。権現舞にも曲芸めいた演出があり、顕著な例として
一番の見ものは『鳥舞』で、これは他の系統の神楽のそれとは全く違った複雑、勇壮な魅力を存分に備えた大人向きの渋い演目であり、中盤に折敷を持って米を撒く所作が入る。鮫神楽・法霊神楽・下斗米神楽の鳥舞が特に良い。
三妙院神楽の芸風が最上まで極まったものに下北半島の修験能があり、これは港から伝わった京風の上品な所作と三妙院神楽の特徴的構成が融合して独立したもので、一般には山伏神楽と大別され「能舞」とよばれる。
青森県の無形民俗文化財には
〜親指だけを残して他の4本をくっつけ、双方を思い切りぴんと伸ばしてブイの字をつくる。これを「トラ(虎)の口の型」といって、四方にトラの口を突き出して悪魔をはらう鬼神の舞が、
ここでは、現在演じられている舞の形が中山神楽と特に通ずると思われるものを整理しているが、共通する最大の特徴は、『虎の口』『三方荒神』『普孫荒神』『ふうしょう荒神』といったラッパ舞への絶大な人気・信仰である。〜
楢山の神楽(
確認演目:『権現舞』『舞い込み』
確認日時:一戸まつり八坂神社稲荷神社例大祭(97〜.8.最終金土日)
特記事項:華やかな幕が印象的な『権現舞』で一戸まつりの夕方から夜間にかけて町内を門打ちする。下舞の快い澄み切った雰囲気、獅子が踊り出しに見せる「くねり」(目を覚ます仕草)が見所で、かなり技術が高い。
女鹿の神楽(
確認演目:『打ち鳴らし』『権現舞』
確認日時:一戸まつり八坂神社稲荷神社例大祭(97〜.8.最終金土日)
特記事項:楢山同様一戸まつりに於ける門打ちが見逃せない。乱破舞の『普遜荒神』も熟練した舞手による貫禄のある手の動きが素晴らしい。女舞『若子舞』の名手でもあり、序盤に着物を手に持って踊る部分がたおやかさに激しさを兼ね備えている。
葛巻の神楽(
確認演目:『盆舞』『権現舞』『三方荒神』『剣舞』
確認日時:岩手県高校文化祭郷土芸能部門発表会(01.9.6
特記事項:九戸の江刺家神楽より伝授された。お囃子方がたくさんいて華やかにはやす。舞全体に一定のリズムを刻む細かい振動が見られる。現在は高校生の舞手が中心となっており、乱破舞は練りの部分でも面をつけずに素面で踊っている。高校総合文化祭の出場演目である『盆舞』の評判が高い。また、特に『権現舞』の掛け歌のメロディーが際立った変調を見せている(下北半島の「獅子舞」に似たような掛け歌を持つものがある)。くずまき秋まつりの初日、夕方からバス停留所(近年は野外音楽堂)で5演目を披露する。
中山の神楽(
確認演目:『虎ノ口』『普孫荒神』『番樂』
確認日時:御所野縄文公園オープン記念イベント カシオペア民俗芸能鑑賞会(02.4.28・5.4)・二戸地区広域郷土芸能大会(03.9.15)
特記事項:『虎ノ口』の装束は鳥兜に袴装束、一見ほかの山伏神楽の鳥舞や御神楽に酷似する。実際一番始めに習うという基本の踊りなのだそうだ。ラッパ舞の崩しの部分の、扇子を手前にだらりと垂らしてからキッと顔の横で構える振りが見事で、同様の荒舞『普孫荒神』にも見られる動きである。『番楽』は若者2人が組み体操を行う曲舞で、他では子獅子と呼ばれているものである。
高屋敷の神楽(
確認演目:『舞い込み』『権現舞』『山の神舞』(『翁』)
確認日時:御所野縄文公園オープン記念イベント カシオペア民俗芸能鑑賞会(02.5.4)
特記事項:『権現舞』は、佳境に入ると道化役が絡み、黄色い綱を権現さまの鼻のあたりに持っていってちょっかいを出し、怒った権現さまが綱を喰わえるや否や、それを手綱に権現さまに馬乗りになる。この趣向は
駒ヶ嶺の新山神楽(
確認演目:『風将荒神』『権現舞』
確認日時:北東北青少年民俗芸能大会(02.9.1 岩手県民会館)・浄法寺神明社大祭(02.9.16
特記事項:爪を立てた形に手を結び、斜め上方向に突き出すようなラッパ舞である。面のデザインも変わっていて、つりあがった大きな目が特徴だ。舞手は素晴らしいセンスを持った中学生(当時)、何物かが乗り移ったような荒々しい首の動きは圧巻である。浄法寺のお祭りでは社殿に権現舞を奉納し、門付けに回る。5分程度の短い権現舞である。
江刺家の神楽(
確認演目:『三宝荒神』
確認日時:漁穀豊穣フェスティバル(02.10.27 カシオペアメッセなにゃーと)・岩手県高校文化祭郷土芸能部門発表会(03.10.2
特記事項:九戸系の神楽に絶大な影響を与えた神楽座だが、現在の印象はむしろ中山手と呼ばれるものに近い。『三宝荒神』などラッパ舞の練りの部分が上品で優美なのが特色。型を決めるような首の細かい動きが番楽の部分で十分に楽しめるのも魅力。刀くぐりのバリエーションも多様である。高文祭での集団群舞は、この神楽が幼い頃からいかに親しまれてきたかを実感させる、あたたかさがあった。
戸呂町の神楽(
確認演目:『三番叟』
確認日時:漁穀豊穣フェスティバル(02.10.27 カシオペアメッセなにゃーと)
特記事項:水神三番叟の一生を背丈を変えながら(要するにしゃがんだ状態で舞ったりする)演じていくもので、祝福芸の三番叟に見られるような雰囲気である。かなり目立つ首の振り方が取り入れられている。地元小学生による伝承活動が主。
堀野の武内神社神楽(
確認演目:『三宝荒神』『虎の口』
確認日時:漁穀豊穣フェスティバル(02.10.27 カシオペアメッセなにゃーと)・
特記事項:笛のメロディーが飾らずに美しいというのが魅力で、耳に残る旋律がある。ラッパ舞の手の出し方が素朴で、動作の後半に挿入されているのが珍しい。崩しでは膝をリズミカルに曲げなから進む動きが中心となり、個人的には練を見所としたい神楽と思う。9月第2金曜日には武内神社祭典の宵宮で『権現舞』他2演目を奉納する。
下斗米の山伏神楽(
確認演目:『鶏舞』
確認日時:
特記事項:唐衣を思わせる変わった衣装で踊る『鳥舞』は,はじめに1人の舞手が幕の外で待ち受けるところから始まり、後になってもう一人の舞手が兎跳びをしながら登場する。腰を落としてひねりを加えた横方向への上半身回転が見事だ。衣の袖を持ってひねるという珍しい動きも入り、後半2人が入り乱れる場面では、シンメトリーを敢えて崩した動きをしていて面白い。八戸方面の『鳥舞』に通ずるところが多いが、より渋く、重厚に踊っている。
石切所の深山神社神楽(
確認演目:『虎の口』『三番叟』
確認日時:
特記事項:二戸周辺の神楽で、特に愛好者から高い評価を受けている。手の動きが2段階になっているラッパ舞は、見た目華やかで観客をあきさせない。三番叟は謡の部分が充実しており、おのおのの所作も上品で華がある。とりわけ回転が美しい。幕には馬仙峡が描かれている。
田中新山社の神楽(
確認演目:『虎の口』
確認日時:
特記事項:上記の機会に、約40年ぶりに復活した。実直で凄みのある荒舞を披露し、観客からはたくさんのお花が上がった。舞の型は一般的に一戸方面で踊られているものと同じで、練りの部分では鳥兜をつけて鬼の面をかぶる。
小友の神楽(
確認演目:『盆舞』
確認日時:
特記事項:他の神楽座のそれと違い、小友の盆舞は非常に緩やかなリズムでゆったりと舞われる。そのため踊り手には強靭でしなやかな動きが求められ、本物嗜好の曲芸を楽しむ事が出来る。各々の所作をつなぐ部分で双方向にぐるりと回って見せる動きが印象的、最後は様々な格好で盆を高く投げ上げ、見事に受け止める。小友の神楽演目には、盆舞のほかに三番叟がある。
入口の獅子舞(
確認演目:『トラの口』
確認日時:二戸地区郷土芸能大会(03.9.15
特記事項:囃子のリズムや動きの基本的な構成は岩手県北のものと同じ、ただそれに実に巧みな工夫を数々加えていて、実に劇的な『トラの口』を作る。荒舞を実感できる素晴らしい練りに比して後半の崩しが若干地味か。掛け声が頻繁に入り、トラの口は大きいからおめでたいのだと歌っている。
袰部の獅子舞(
確認演目:『番楽』『翁』『三番叟』『鞍馬』
確認日時:熊野さまの年越し(平成16年12月)
特記事項: 公演の前後を短い番楽で飾る。神社から灯明をともして集会場に行く道すがら、「通り拍子」を奏でるが、曲の合間にリズムに変化をつけて仕切りなおしをしている。葛巻の七つ踊りに似たようなお囃子と思った。『翁』ははじめは面をつけないで、後半になって面を付ける。子供をさらう部分もあるので形式は能舞に近いが、序盤の囃子などリズムが早く岩手県北神楽風である。
江刺家手、八戸藩ゆかりの山伏神楽
〜
長興寺の神楽《九戸神楽》(
確認演目:『杵舞』『権現舞』
確認日時:北上みちのく芸能まつり(01.8.8)・熊野神社例大祭(01・04.8.17)
特記事項:色とりどりの浴衣姿の笛吹きをはじめ、お囃子方がたくさんいて太鼓も複数用いる。この地域のほかの神楽では耳にしないようなメロディーも散見される。足を使った曲芸のとき、袴の裾を帯に挟んで即席のたっつけ袴を作る趣向が面白い。
内丸の神楽《法霊神楽》(
確認演目:『一斉歯打ち』『中山手権現舞』『江刺家手権現舞』『江刺家手山の神』『中山手山の神』『三番叟』『番樂』『翁』『鶏舞』『剣舞』『杵舞』
確認日時:八戸三社大祭(01.8.3) おがみ神社神楽祭(02.5.11〜12)
特記事項:『権現舞』と『山の神』は一戸バージョン(中山手)と九戸バージョン(江刺家手)の2種類を伝えており、こういう例は法霊神楽独特の伝承過程が生んだきわめて珍しい特色といえる。九戸系の神楽を最も洗練した形で伝えている団体で、舞・囃子とも大変勇ましく迫力があり、切れがよい。『杵舞』にはたくさん余興がつき、八戸広域に見られる至芸の一つとされる。
沢田の神楽(
確認演目:『一斉歯打ち』
確認日時:軽米八幡宮例大祭(01.9.16)
特記事項:一斉歯打ちのお囃子が上記の法霊神楽と若干違う。
鮫の神楽(
確認演目:『番樂』『三番叟』『鳥舞』『子獅子』『剣舞』『鞍馬入り』『シコロ曳』『五条の橋』『墓獅子』
確認日時:鮫神楽発表会(02.4.14
特記事項:三妙院・吉祥院から伝わった山伏神楽が地元の漁師たちによって独特の味付けをされて伝承しているもの。5月人形のような本鎧装束で2人の武者が立ち回る「組舞」と呼ばれる歌舞伎、軍記もの演目が数多く伝承している。組舞をもって鮫神楽と上方文化の関連を珍重する愛好家もいる。囃子のリズムがほかと比べて緩やかなので,楽曲が違うように聞こえる。
阿子木の神楽(
確認演目:『歯打ち』『鶏舞』
確認日時:鳴雷神社例大祭(03.8.18)・久慈地方郷土芸能祭(03.11.29 カシオペアメッセなにゃーと)
特記事項:『歯打ち』は鳴雷神社の祭礼期間、獅子頭一体と法螺貝を伴って
瀬月内の神楽《九戸神楽》(
確認演目:『権現舞』
確認日時:神明社例大祭(04.8.17
特記事項:3年に1回開催される戸田地区の夏祭りにおいて、権現獅子祓いを行う神楽。神輿行列に随従するほか、戸田地区の1戸1戸を門付けし、お散米を噛んだ後に刻みの早い歯打ちを行う。太鼓は大ぶりのものを2つ使い、囃し方は黒烏帽子を着用、総勢15人ほどで町内を巡る。伊保内でも、長興寺の神楽が同様の門打ちを行っている。
小川原の神楽(
確認演目:『番楽』『三番叟』
確認日時:
特記事項:見得を切る動きが頻発する番楽は大変かっこいい。下あごを覆う帯が幅広で、鼻の辺りまで覆っているのは珍しい。三番叟は袴姿の子供たちが演じた。鮫のものに似ている。
県境の南部神楽(金田一・田子・斗内手)
〜
・三戸の神楽[斗内獅子舞](
確認演目:『ななつもの(七つ道具)』『権現舞』『番楽』『鶏舞』
確認日時:三戸三社大祭(01.9.13)・民俗芸能保存会発表会(04.3.21
特記事項:南部氏の庇護を受けた歴史ある山伏神楽として、青森県無形文化財に指定されている。『ななつもの』は三戸三社大祭にて山車行列の最後尾に付き踊る、歩きながらの静かで素朴な踊り。『権現舞』では下舞で扇・襷のほかに抜き身の刀を用い、獅子を取る部分では、地味だが扇を飲む所作がある。下舞の舞手が獅子頭を取らずに尾を取るの。『番樂』は斗川小学校児童が囃子方まで含み演じている。『鶏舞』は袖を取る舞、2枚の扇を使う舞、2人の舞手のうち一方だけが千早と鳥兜をはずして舞う番樂にわかれ、扇を羽根に見立てて舞台を荒々しく駆ける部分に迫力があり、ラストの番樂で盛り上がりは最高潮に達する。神楽幕はステージ用に白い布に描いたもの、獅子頭は麻の長髪に向かい鶴を2つ大きく染め抜いた紺色の幕、鳥兜には鶏の姿はない。
・金田一の神楽(
確認演目:『盆舞』『しし踊り』『春祈祷』『番樂』
確認日時:御所野縄文公園オープン記念イベント カシオペア民俗芸能鑑賞会(02.4.28
特記事項:この神楽の盆舞の魅力は、宙に向かって撫でるように盆を扱うしぐさであり、舞全体に実に上品なアクセントを加えている。始めに扇子を開いた形で逆さに口にくわえて登場するのが変わっている。まるで庭踊りのように太鼓を胴取りがしっかり胴にくくりつけ、しかも2基用いる。
・田子の神楽(
確認演目:『盆舞』『傘舞』
確認日時:全国高等学校総合文化祭郷土芸能部門発表会(05.7.30
特記事項:田子高校の生徒が演じたものを中心に見た。太鼓の拍子が荒く派手な部分のみを追っており、歯切れが良い。掛け声も素晴らしい。舞は曲芸中心だが、曲芸に入る前の部分で道具を胸元に差し出し、左右に見得を切ってみせる部分が素晴らしい。きり番楽(踊りの終盤に扇を手に踊る)は、勢いはそのままに上品に丁寧に手をかけて踊られていて、優雅さも感じる。傘舞は2本の番傘を閉じた状態、開いた状態で操る演目。
祈祷神楽
〜神事に伴われる獅子舞のみの神楽で、地味で連続的な拍子に従い激しく祈るように権現舞を舞う。〜
下北の能舞
〜江戸時代の記録にも下北半島に修験能があったとの記述があり、山伏神楽に比してその舞ぶりの節々に中央の気品を色濃く繁栄した上品さが見られ、また儀礼舞以外はすべて能の謡曲にその原点がある。曽我兄弟や義経記、平家物語などを主題とした武士舞が多く、額に兜の鍬形のような飾りをつけオウオウと気合をかけながら勇壮に舞う。三妙院神楽と能舞とは芸の確立において直接的な関連は無いとされているが、現在の芸風には多分に類似する部分がある。特有の鋭さとおどろおどろしさを感じさせる笛の音・激しく刻みの細かい手平鉦の音・囃子には、観客の心を揺さぶる一種のホラーがある。〜
・白糠能舞(
確認演目:『木曾』『翁』『鞍馬』
確認日時:北上みちのく芸能まつり(00.8.8)・北の大地に舞う(05.11.5 岩手県民会館)
特記事項:『木曾』は巴御前が敵将の首を討ち取る筋の勇壮な武士舞で、巴紋のついた黒い烏帽子に鍬形の飾りをつけて勇みながら巴が登場し、相手方の首から数珠をかけた法師と激しく立ち回る。巴御前の勇ましく悲しいエピソードに唱和する激しい手平鉦は干戈の交わる戦場の音、刻みの細かな独特の太鼓のリズムは戦場を疾駆する馬の駒音、印象的な吊り上るような笛のメロディーは嘶く軍馬か兵士の悲鳴か…。”武士舞”という岩手県央にあっては非常に遠いジャンルを限りないロマンで持って見せてくれた芸能。
・鹿橋能舞(
確認演目:『鐘巻き』『鳥舞』『へんざい』『三番叟』『木曾』『権現舞』『鈴木』『鞍馬』『武士舞』
特記事項:修験芸能としての『金巻き』では最も劇的な演出例であり、序盤の女舞、沙文の後の民謡調の掛け歌にあわせて徐々に狂い、魔に魅入られるように印を切る女、山伏と格闘する部分では呪文のような掛け歌が延々と輪唱され、組み伏せられてうねる般若の動きは大変おどろおどろしい。能舞において最も誇られる『鉦巻き』を特に見事に仕立てる組として知られる。
・大利能舞(
確認演目:『御神楽』『鳥舞』『籠舞』『翁』『三波申吾舞』『十番切』『綱引き』『鈴木三郎』『渡辺源吾綱』『鞍馬』『権現舞』
確認日時:正月公演(03.1.3
特記事項:『籠舞』は白黒2つの翁面を盆に載せて両手にささげ、四方を踏み静める舞。その後の『翁』は先ず面をつけずに登場し、次第に酔っ払ったようなしぐさとなって倒れこんでしまい、面を付けるとはじめは顔を意識的に隠しながら舞う。途中、2匹の鬼を従えて客席に乗り込み、子供をさらって神楽幕の中に突っ込む。『渡辺源吾綱』は羅生門の鬼の伝説を歌舞伎風に演じる。鬼の手には、代々伝わる乾燥した熊の手を用いている。
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演目の紹介
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獅子舞
三妙院神楽で一番多く舞われるのは獅子を使った権現舞であり、神社神輿渡御の際にはこれを簡素化した派手な獅子舞を演じることがある。また、墓前に獅子舞を奉納する例も見られる。青森県広域で神楽を「獅子舞」と称していることから考えても、とりわけ観客に親しみの深い芸であるように思われる。
『権現舞』
神楽の幕開けを飾る祈祷舞で、獅子頭を使って歯打ちを行い悪魔を祓う。県内ほぼ全域に見られる権現舞のうち、この地方のものはとりわけ動物色が強く、くねりを伴った生々しい動作には愛玩的な親しみを感じる。権現様にいたずらをした子供をしかった親が早死にするとか、大漁のお祝いに集まった権現様同士がけんかをしたとか、コミカルで親近を感じられる伝説も多い。また、道化が絡むという趣向(一戸 高屋敷所見)や下舞無しで祈祷を行うセンスには、中央の芸風の影響(いわゆる「江戸獅子舞風」であるということ)を見ることも出来る。一戸の権現様は、幕が歌舞伎の幕のように鮮やかな赤、黒、黄色、緑色などで構成されているのが面白い。
〜芸態スケッチ 青森県指定無形民俗文化財 法霊神楽の2つの権現舞(02.5.11)〜
『中山手権現舞』は数珠を手にした下舞から始まり、周囲をすり足で回ったあと扇子を閉じたまま中に向けて構える仕草を軸に扇子で舞い、太鼓にかけてある布、よく見れば襷なのだが、これを手にして振り回し、体に巻いて権現様の前に座る。獅子を手にして舞っていくが、この間やはり歯打ちがかなり強調され、しばらくは手に獅子をかぶして舞う。その後、身固めを行う。観客から身固めを受ける人を指定して、一通り体をかんでから幕の中(獅子頭についている幕の中)に入れ、念仏のような掛け唄を唱える。身固めを終えると”もうだり”となる。もうだりは獅子頭を低く構えて前に出したり後ろに引っ込めたりしながら歯がみを行うもので、水鉄砲を構える子供のような無邪気さにあふれる。その後、やはり歯打ちを繰り返し、最後は頭を大きく前方に垂らすようにして踊る。ちょうどお辞儀をした格好でがんがん歯打ちをする。
『江刺家手権現舞』は下舞の部分で開いた扇子を鮮やかに操るのが魅力。また、本舞の前半、手に獅子頭をかぶして踊る際は、まるで獅子頭に魂が宿って暴れまわっているかのような生々しさがある。下舞の後半も、舞手が獅子を思わせる手をついて回るような仕草があり、また、袖をもって歌舞伎の女形のような振りを行ったりもする。こちらの権現舞は、総じて舞手に獅子が乗り移り、獣としての獅子を奔放に、躍動的に表現しているように思われた。
『一斉歯打ち』
主に江刺家手の神楽が伝承する。神輿行列に従ずる際、あるいは門打ちの際に行う簡単な権現舞。一般的には5頭前後の権現頭を激しく頭を左右に振りながら一斉に歯打ちさせるもので、頭の切り返しの鋭さと歯打ちの大音響が魅力である。法霊神楽の場合は余興が加えられ、中でも”青柳”と称する、前方に伸び上がって倒れるような踊り、体を反らせながらの連続した歯打ちは実に迫力がある。
曲舞(くせまい)
三妙院神楽にはたくさんの曲芸が伝承していて、これらの起源は相当古く、七つ踊りの派生との関連も注目されるところである。拍子は大抵”剣拍子”という大変軽快なものが用いられ、音楽とは無関係に自由に舞われることが多い。幕出しは決まって「○○を初めて拝むには、若葉の松こそおめでたい」と入る。下舞に当たる部分で襷を舞ながら結んで見せるという曲芸を見せる組もある。
『杵舞』
杵を片手で回したり乗っかったりしながら自由に舞われ、県北地域の七つ物踊りに非常に良く似ている。八戸の神楽では最高の妙技として知られ、現在舞える人は一人しかいない。扇子繰り、剣舞の体くぐし、杵を足で持ち上げて腰のところで回す、杵を片手で回す、内陸の七つ踊りの杵振りがする足をくぐしたりする一連の所作…と立て続けに曲技を披露し、一番の見せ場は、饅頭笠をかぶって刀を口にくわえ、杵のくびれに足をかけて立ち、番傘を広げて片手で杵を回すという妙技。この前に、やはり杵を立ててその上に乗って見せ、その状態で手平鉦をすって見せるというものもある。いずれも杵の上で比較的長く安定状態を保っているのがすごく妙技然としていていい。最後は鉢巻をおろして目隠しをして片手杵回し。ここまで派手ではないが、長興寺の九戸神楽にも人気の演目として伝わっていて、見せ場はやはり杵の一本立ち。こちらでは扇子をひらめかせて舞台を一周してみせる。
『盆舞』
お盆を遠心力を使って手にすいつけて見せ、様々な格好で最後まで落とさないように舞って見せる。曲舞では唯一、番楽拍子を用いて囃子にあわせた芸を演じる例である。基本の動きとしては、盆を乗せた手のひらを上下に振る、そのままあたりをぐるりと走り回る、左右の手を交互に真上に上げて見せる、前後にでんぐり返りをする…、など。この地方特有の趣向として盆を投げ上げる仕草を伴う例もあり、盆の上にさらに小皿を乗せて舞うこともある。
『子獅子』
体を使った曲芸、即ちマット運動的な組体操なのだが、あまり安全性に慎重でない組み方(片手をつないだだけでとか)をさらっとやってしまうのが独特で、中でもジャイアントスウィング的ノリの曲芸は珍しい。2人の舞手が様々に組み合って演じる様が、清涼山の石橋の向こうに戯れる小獅子のようであるとのことから命名。幕出し歌は「峰の小獅子は谷へと下る、谷の小獅子は峰へと登る」というもの。一戸の中山神楽では『番樂』の後半部分に登場する趣向。
『剣舞』
”つるぎまい”と読み、刀をしゃがんだまま体をくぐして振り回したりする曲芸。普通の装束に襷をかけて踊り、前半の扇子を投げる曲技が見事。割と短い舞で、最後のほうに自分の喉もとに刀の切っ先を当てて前転するのが命がけの至芸。曲舞の中でも式の色合いが強く、囃子は剣拍子といって、一般に見られるところの七つ拍子である。
役舞
『鳥舞』
この系統の神楽において最も注目すべき複雑華麗な舞で,扇子と鈴木を持って舞う2人舞である。はじめは腰を手にして何も持たずに舞い,次に2人の採物を片手に束ねて持ち,扇子を開いている手に移し変え,最後に扇子を開くという一連の流れがあり,扇子を開いて踊る踊りは『番樂』の拍子に乗って行われる。採物を手にしない部分まで伝承しているのはこの系統の特殊さであり,常にお互い背中合わせになって踊るのが基本。途中一人の舞手が抜けて,最後は一人舞になる。「唐衣,後の世までの千早振袖…」という幕出しの歌も変わっている。兜の鳥は羽が動くように細工されていて,鶏を強調した造りになっている。首の動かし様でこの兜の鳥が跳ね回っているように見せるのが熟練の技である。
『山ノ神』
山々を守る荒神に祈る舞で,八戸周辺のものはラッパ舞をベースにしたリズミカルな荒舞になっている。見せ場は中盤に柄を削った御幣を天井につきたてるシーンで,法霊神楽では神楽殿に仕掛けをして往時のままの雰囲気を伝えている。中山手とされるものでは,岩手県中部の北上大乗神楽の荒舞に近い,重厚でねっとりした荒舞に仕立ててあり、崩し舞では激しく刀を操って祈祷し,最後に「水」という字を書く。
『翁舞』
どちらかというと三番叟をベースに作ったような、道化色の強いもので、八戸では老いの悲しみを面白おかしく舞って見せるものとして白ではなく灰色がかった面を用いる。一戸周辺では長い下舞の後に面を隠すような所作を取った後、よろよろと番楽を舞って見せる。いずれ、老人の雰囲気を強調した演じ方をしている例が多い。
『注連縄切り』
神楽座を守る注連縄を切って観客に加護を与える舞。はじめはラッパ舞調の落ち着いた荒舞で、後半は剣拍子に乗って激しく踊る。最後に刀の切っ先を自分の喉もとに当てて一回転した後、注連縄を一刀両断する。
乱破舞(ラッパまい)
鮫の組舞(武士舞・武者ものの演目)
庭舞
岩手と青森の県境にあたる地域の神楽座が特有する演目で、主に少年少女が集団で踊る野外用の短い演目である。
『ななつもの』
七つ道具ともいわれている。いわずと知れた”七つ踊り”の起源となる芸能であり、三戸神楽では神輿行幸の折に最後尾について厄払いをする素朴な芸能である。杵や弓矢など7種類の宝物を横に持ち上げ、揺らすようにする所作が主の短い踊りで、七つ踊りから連想するとかなり地味な印象が強い。
『しし踊り』
文責:山屋 賢一