今年は全部の組が初挑戦の演題、なのに私が子供のころに見た山車の面影が随所に出てきて懐かしい。
おどる若鮎 流れを止めて 尼子再興 十勇士
（見返し） 色香薫るる 一肌姿 園井恵子の 乱れ打ち
鮎之介は「裸人形」と呼ばれる盛岡独特のジャンルの演題である。着物は簡素に、その分木彫の手足を関節まで出して動きを付けなければならず、なかなか難しい。物資に乏しい時代の盛岡山車はこのような高い技術で支えられ、誇りを守ってきた。
今回の山車には盛岡の古い顔を使ったらしいが、実にいい顔で山車全体に気品が出た。
義理と情けを 両手に込めて 高くかざすや 四ツ車
秋の実りに 引き出す車 引けやみ組の 勇み肌
見返しの漁夫が獲っているのは魚偏に成の字で「クギ」と読み、一般にいうウグイのことらしい。
大八の着物は、そういえば昔はこういう色味しかなかった。今回、実に20年ぶりくらいで再会し、嬉しくなった。荷車の車輪は常に回転し、ライトも入った。
今年は、番付が絵紙でなくタオルになった。
舞い飛ぶ牛若 薙刀交わす 五条の橋を 走るかに
源氏再興 誓いを胸に 朧月夜の 五条橋
下山組はこれまで源氏ものを好んで選んできたが、五条の橋だけは手をかけずにきた。大人しくなったり色味が減ったりして、組の得意が出てこない懸念があった。今回敢えての挑戦に当たり、月岡芳年の義経記五条の橋図 誰もが一度は見るであろうあの潰れかかったような大迫力の錦絵の立体化を目指した。特にも弁慶について、従来のように法衣を着せず頭巾も巻かず、きらびやかな鎧を着た大男に仕上げようというのが肝である。
