川口豊城稲荷神社祭典山車2012

 



 当たり年とは、秀作が揃いながら中に一台飛び抜けたものがあって、周囲を飲んでしまっているような年のことである。今年の川口は、まさにそういう当たり年である。


下町山道組畠山重忠 / 源之丞梵鐘

遠くから眺めて圧巻の完成度である。高さのみならず幅・奥行きまでも充分に見せた

智勇備えし 大力無双 今に傳わる 武勇伝
愛馬三日月 鎧に背負い 鵯越を 駆け下る

※演題紹介※

 
川口の殿様を、現在も残る寄進梵鐘と共に。人形そのものは粗末だが、体勢・演出で整って見える

 畠山重忠の馬は普通、騎馬武者用の馬をそのまま上げて使う。今回は構図に合わせて大部分を新作した「重忠用の馬」であるので、人物と馬との密着度が凄い。場面全体を高く据えて股の下に鵯越の断崖を見せたのは、川口ならではのダイナミックな構想・杖にした野木の膨らみも効果的…構図の旨味をほぼ全て遣い尽くしている背負い馬である。

正面からでは伺われない馬の奥行きが、通り過ぎる段になって初めて実感できるのがよい
 






み 組児雷也 / 鯉の滝登り

豊かな色味が人形・衣装のみならず松の緑によってももたらされているのは、古風の美しさである。なかなか顔が見えないが、見えればとてもいい顔

蝦蟇に蛞蝓 大蛇の術に 追ひつ追はれつ 技比べ
(祝い) 秋の祭りだ 稲荷の山に み組音頭が こだまする

※演題紹介※


レリーフと実際の鯉とを併用、スズランテープを裂いて表現した滝

 武者専門の川口に一つでも歌舞伎山車が出るのは、なかなか効果的であった。歌舞伎なのに渋さがあり、渋さゆえに錦の着物が映える。高さを充分に強調した端正な山車、蝦蟇はタテに長く煙は鼻から出る。

三竦みの最大のポイントは手の美しさだと改めて感じた。手の型が全体を落ち着かせ、山車全体に品を与えている

 






井 組碇知盛 / 巻掘神楽『御神楽』

電飾が灯ると一段見栄えが良くなる山車であった。人形の据え方がやや単調?船が波で見えなくなってしまっているのが勿体ない

碇知盛 栄華の夢は はかなく散りゆく 壇ノ浦
(見返し) 苦節幾年 望みはひとつ 願いかなえし 初舞台

※演題紹介※


巻堀神楽は隣町玉山の郷土芸能、山車も岩手町を越えて芋田あたりまで動いたらしい

 碇知盛には定例的な型があるが、井組では前作を新町組・本作をの組…と「岩手町内で生まれた型」で作っている。型が生まれた段階では、知盛が海に入ってしまう瞬間を表現したとのことである。碇を離れて手前に突き出た手が効果的である。

晴れ着の子供が山車の先頭にいた。懐かしさを感じさせる一景







※正式な演題名はこちらで


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