いざや晴明 陰陽術で 討てや大蜘蛛 戻り橋
(見返し)粋の助六 ゆかりを結び 蛇の目に透かす 桜ばな
●初登場 陰陽師の山車
陰陽師が小説や映画で流行ったころ、主に青森でねぶたや山車に作られた。大迫でも出たが、ねぶたの影響だと思う。
橋中組としては、これも手探りの中であったが平成5年、源頼光と組で土蜘蛛退治を出した。この時、当初は蜘蛛を上に配す構想だったと聞いたことがある。これを20年ぶりに改めてやってみるだけでなく、晴明として新たに作り出そうという心意気がかっこいいし、夕闇が濃くなるほどこの蜘蛛は面白く変化していった。山車を楽しんでいる感じが一番した山車。
幡隋院長兵衛(本組) 演題紹介
男伊達なる 長兵衛が 敵の湯殿に 花と散る
(見返し)強きをくじき 弱きを助く 男を競う 町奴
●幡隋院はお気に入り
幡隋の長兵衛は好きな演し物だ。古臭くて地味だが、話がわかりやすくて子供のころから好きだった。水野がわざと酒をこぼして長兵衛を風呂場に誘うなんていうのが実にいい。大人になって改めて思うのだが、山車に物語を求める私の癖は、この演題あたりの影響かもと。一戸まつりには平成6年以来の登場、直に見るのは初めて。
遠山金四郎(野田組) 前作
山車は遠山 北町奉行 江戸の世直し 桜咲く
江戸に咲く花 数々あれど 桜吹雪の 勇み肌
●今回の場面は
「この遠山桜、見忘れたとは言わせねえぞ!!」盛岡山車で出すのはもっぱら、このお白州の場面。二戸だと、その前の乱闘の場面がたまに出る。他地域では全く見ない。
3度目に見る一戸の遠山桜、今回は罪状を記した書状をバラリと広げ、扇の持ち手で悪人を一喝…という姿。派手さの中にまとまりがある。
矢の根五郎の花道下がり(西法寺組) 演題紹介
梅の香ゆかし 矢の根の五郎 黒に揚羽の 蝶が舞う
鞭に込めたる 兄者の思い 五郎時致 馬の上
義経一の谷(上町組) 演題紹介
油断する 平家の陣へ 馬もろともに 駆け下る
平家一門 驚きあわて 屋島をさして 落ちてゆく
源氏の棟梁源義朝の愛妾で、義経の母。当時まだ乳飲み子であった義経ほか3人の息子を連れて雪中を逃れ、敗れた源氏の子らを守った「強く気高い母」である。有名な逸話ながら盛岡山車にはあまり上がってこなかった。今回非常に見事な定型ができたと思う。
文責・写真:山屋 賢一(見物日:平成25年8月24日)