熊野神社例大祭 石鳥谷まつり報告

 



 毎年9月8日に熊野神社に奉納される下組、上若連、中組、上和町組、西組の5台の山車。正式な形での盛岡山車最南端の伝承例である。染め方の違う桜を併用し両側に飾る、山車の前後に雪洞(御神灯)を付ける、立ち岩に絵を描き背景を凝って作る、菖蒲や山吹を伴う…などの特色がかつては共通して見られたが、現在は各団体個性の際立った作風へと変化している。近年は、珍しい歌舞伎演題がよく登場する山車祭りとなった。花巻の「女祭り」に対して石鳥谷は「男祭り」との意識が強く、勇ましさを強調するため、もともと笛はつかなかった(現在は全ての組が笛を導入しているが)。大太鼓のリズムに合わせて山車を激しく揺らし、「皆さん見てくれ この山車を 今年の山車は○○だ」「写真を撮るなら今のうち」「梶棒見てくれ色男 小太鼓見てくれ可愛い子」など歌のような掛け声をたくさんかけて威勢よく引く。すべての山車が合同で動く機会は最終日夜6時からの夜間パレード。



上若連【菅原伝授手習鑑 車引/藤娘】
★管理人撰 石鳥谷一番★
梅も桜も飛び散る中に 緑変らぬ松の風

誉れをいそぐ 元禄見得は さだめを知らぬ 車前
長唄ばやし 大津絵抜けて 島田に揺れる 藤の花

※演題解説(往年の名作も掲載)※


 歌舞伎「菅原伝授手習鑑」に登場する3兄弟は、梅王丸・松王丸・桜丸でそれぞれの名前にちなんだ柄の着物を着ています。車を攻める赤い着物の梅王丸、守るのは白い着物の松王丸。血気に逸って時平の牛車を打ち壊した梅王丸ですが、松王丸のあまりに鋭い眼光に気圧されて、たじろいでしまいます。緊迫する力の均衡状態に、歌舞伎ならではの華やかな色彩を添えて。

笠がラメが入ったみたいに光っています
目線が絶妙 かっこいいです

 (コメント)ここしか出せないクオリティーは今年も健在、顔がさらにかっこよくなりました。




中組【弁慶立往生/笛吹き義経】

満身創痍で なお義経を 護る仁王か 武蔵坊
熊野祭りに 引き出す山車は 男弁慶 立ち往生



 義経の最大にして最高の家来、武蔵坊弁慶。その断末魔は自らのはらわたを引きちぎって敵に投げつけ、何十本の弓矢矢玉を享けても決して義経のそばを離れなかった「立往生」。高舘に白龍が昇り、弁慶は不動明王となった。

今宵牛若名残の笛に 五条をわたる秋の風
横から覘くとこの壮絶さ

 (コメント)大男でお堂が渋い色で悲しい感じなのがいいですね、見返しも面白い。




上和町組【児雷也/吉野山】
足を乗っけたのが効いてます

変化自在の 呪文の響き 此処に児雷也 業の冴え
静の守護神 源九郎狐 鼓の音に 親想う

※演題解説※


 印を結んでドロンと大蝦蟇に化ける忍術使いの児雷也、これ以上説明しなくても面白さは伝わりますよね。今回は児雷也と同じ格好で蝦蟇も見得を切っているのが見所。見返しは狐忠信。初音の鼓が鳴ると、皮に張られた母親を思い出した忠信が静御前にその面影を重ね、甘えてしなだれかかるという場面です。

温度差がきちんとついて見事な見返し
忠信の表情が絶妙

 (コメント)盆綱より上のスペースの使い方が面白い、インパクト一番!







西組【矢の根/百代菊 菊尽くし】
歌舞伎十八番の矢の根を飾り 五郎時致見得をきる

踏み出す姿も 鬼神の如く 矢の根五郎は 江戸の華
御所のお庭に 色よく咲くや 七重八重菊 百代菊

※演題解説※


 歌舞伎十八番の「矢の根」は盛岡山車の定番で、よく矢を研ぐ姿が製作されますが、平成9年に盛岡の三番組が出した矢の根は大きな鏑矢を抱えて六方を踏む五郎を象った作品でした。今回はその絵番付を元に、表裏とも石鳥谷西組の解釈を加えて再現してあります。18区町内会の皆さんによる、100パーセント手作りの作品です。

手足のこだわり具合をじっくりご覧下さい

 (コメント)手足の仕上げに非常に凝っていて、上品な秀作。




下組【国姓爺合戦 紅流しの場/錦祥女】
あえてこういう角度を掲載してみました

紅の流れに 笠投げ捨てて 日ノ本無双の 和藤内
甘輝落とせず 無念の最期 悔し涙と 流す紅

※演題解説※


 「もし夫があなたに味方しないと決めたなら、お城の欄干から合図の紅粉を流しましょう」義姉の約定を頼みに雨の闇夜に松明をかざす和藤内、その顔が見る見る高潮し、石橋の下、仄かに明かりを宿す水面に一筋の紅が流れる。真っ赤な筋隈取は血管の拡張を表現するもので、この場面では怒髪天を突く主人公の強烈な怒りをあらわしています。

叶わぬ望みを紅粉に託し さだめ悲しき錦祥女

 (コメント)横から眺めたときの飛び出し具合が豪快。




※正式な演題名はこちら




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