志賀理和気神社(赤石神社)例大祭日詰まつり2014
梅は飛び 桜は枯るる 世の中に 何とて松は つれなかるらん 天下無双の剣士と称えられた二人の命がけの決闘。晴れ着で待ち受ける準備万端の佐々木小次郎、一方遅れて現れた武蔵はいでたち・手にする獲物さえ、無念(奇をてらわないありさま)の一言に尽きるまことに簡素なものであった。吉川英治の名文は「武蔵は無念、小次郎は無想」と両剣豪の有様を綴っている。 平家の凋落を決定付けた倶利伽羅峠の戦い、怒涛のごとき「火牛」の夜襲に平家方はなすすべもなく、陣を乱して谷底に落ちていく。その有様はまるで、龍が火を吐きながら天に昇るような、実に華々しく勇ましいものであった。やはり観衆の話題は、斬新な未知の演題と大牛の迫力に集まるようである。 なるかみは「雷神」とも書き、意味合いもその通り。同趣向の能「一角仙人」は、どうやら雨乞いの祈祷のための舞曲らしい。鳴神が長く山車に採られなかったのは、エロ話であることに加え、雨を呼びそうな懸念もあったのかもしれない。 ※各山車について管理人の思うところは、下記機会にてお話しいたします。
接近時と遠望時で見栄えが大きく変化する山車が多く、今年ならではの見どころとなりました。
三つ子舎人が 主君を守り 義理と情けの 車引き
主君の仇討ち 吉田社前で 阻む松王 仁王立ち
童子格子のどてら・梅松桜縫い取りの紅白の着付けなど、成立当初の演出を大部分残す名作「菅原伝授手習鑑」、特にも車引きの場は、浄瑠璃に比べて歌舞伎が圧倒的に優れた演出 との定評がある。松王丸はこの場面でも悪の手先であるし、終始悪役・嫌な男として舞台に現れるのだが、最後の最後で一人息子を身代わりに、道真の遺児を救う(寺子屋の場)。実は松王丸こそ、菅原家のため敢えて敵方に与し物語中最大の犠牲を払う、大義と悲劇の男なのである。
車引きは松王と梅王で紅白を揃えるのが一般的だが、上組は梅王の赤を大鳥居に担わせ、従来にない斬新な構想の車引き松王丸とした。
その名後世に 巌流島と 両剣豪を 偲びつつ
(見返し)契りとどめし 手植えの花に 宿る乙女の 恋ごころ
見返しは赤石神社に残る県内最古の老桜に、武蔵を慕い追い続けるお通の姿を添えた「隠し表裏一体」。
褪せぬ桃香の 想いの花に 恋路お通の 旅すがた
源平合戦 倶利伽羅峠 平家の眠りを おどろかす
燃ゆる松明 昂ぶる火牛 義仲夜襲の ひづめ音
一戸は角盆・日詰は丸盆なので、女暫は大きく前のめりになった。これは邪気を払って福徳を招く見返しの意図に奇しくも符合する光景で、距離を置くほど巴御前と大太刀の勇みが増してくる。
姫の色香に 鳴神不覚 龍神飛び去り 激怒する
(見返し)鳴神欺く 絶間の姫は 宮中一の 美人なり
柱巻きは怒った鳴神の見せる荒事所作のうち、最も重要な型といわれる。座頭にしか許されない型ともいう。今回初めて前進する柱巻きの山車を見て、迫力と勢いとまとまりと、今までの鳴神の山車には無かった凄味を多々感じた。封印を解かれた龍が疲弊しきった老いた龍なのも、なるほど、とは思う。
岩手県立博物館日曜講座「県博で山車を見る会」 講師:山屋賢一
11月9日(日)13:30〜 岩手県立博物館(盛岡市上田松屋敷34)講堂にて
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