志賀理和氣神社例大祭日詰まつり2012

 



 日詰まつりは改めて、山車に・音頭に存在感のあるお祭りだなあと思いました。
 それぞれの山車に凝った部分、手をかけた部分があったのが「日詰らしさ」であってほしい。


一番組出端の暫 / 浜松屋の弁天小僧

暫をいかに照らすか、「夜祭の里」日詰の野心あふれる創作に拍手。下半分が短く見えバランス不足なのが残念

纏う素襖に 雄ごころ宿し いざや向かわん 活舞台
(見返し)知らざあ言って聞かせやしょうの 啖呵で魅せる名場面

※南部流風流山車『暫』

 
近すぎると華奢に感じるが、遠くから見るほど良く見える。これぞ見返し力というものか…。人形・舞台の色合いがなんとも言えず見事で見入ってしまう

 暫は江戸歌舞伎の一年の始まり、霜月歌舞伎の「顔見世」に欠かせない演目で、上演は明け方に行い、悪人たちが弱い者達を虐げる場面は薄闇の中で、「しばらく」と声をかけて鎌倉権五郎が登場する場面でいっせいに板戸を開け放ち「救いの夜明け」を演出したのだとか。今回の背景は歌舞伎座の観客席、花道を照らす赤い提灯。主役は直立不動、体の大半を素襖で隠すというインパクト重視の構図に。
 見返しも、よく知られながら山車には非常になりにくい弁天小僧の啖呵。弁天小僧は美青年なので、武家の娘に化けて悪事を働き、一時疑われて額に傷を作る。それでも騙しおおせるかというあと一歩のところで見破られ、女襦袢を脱いで刺青を見せ胡坐をかく。まるで歌舞伎を舞台ごと切り取って乗せたような、画になる見返し。

素襖にあしらう三枡の誇り 歌舞伎十八番の張り姿

 




上 組雨の五郎 / 汐汲

初日の姿。雨の五郎らしさが皆無でわかりづらいが、バランスは満点・色合いも良く、何より顔が上手。動きも単調にならないように工夫されている

花の姿絵 歌舞伎の十八番 雨の五郎の あで姿
(見返し)須磨で過ごせし 三年の想い 烏帽子狩衣 松に掛け

参考)前作(平成20年日詰まつり『曽我五郎時致』


バランスよくまとまった女形見返し、まとまりすぎで退屈ですらあるが、美しくはある


 雨の五郎は、仇討ちの本懐を包み隠して廓に遊ぶ曽我五郎。上組が自作に至った年の演題でもある。今回、絵紙には紅白格子の着物で前髪を出し、傘を持たない五郎を描き「雨の五郎」と題した。果たしてこの通りの姿で初日を運行、傘は傍らに立てて辛うじて「雨の五郎」を表現したが…。2日目はその手に傘を持たせて肩に掛け、なるほどこれは「雨の五郎」と思わせパレードへ。
 …最終日にはさらに「雨の五郎」のトレードマーク、紫頭巾を付けて「雨の五郎」度を増した。なんという創意、遊び心。楽しい山車である。

3日目の運行時はこのようになっていた。傘だけでも効果があったが、この頭巾が実に効果的で、これで完全に「廓通い」に

 




橋本組九戸政実 / 岩長姫

鎧がとても綺麗に出来た。色合いも良く、つぶし人形も綺麗に見せているのが良い。目線がまったく効いていないのと顔の仕上げが中途半端なのが気になるが、動いてみれば面白味のほうが先行する。たしかに、こういう武者の山車を見たかった時期があった

南部一族 尊厳かけた 知勇兼備の 政実か
(見返し)酒に酔いしれ 岩長姫の 邪心(蛇身)の顕れ とめどなく

 豊臣秀吉が送り込んだ精鋭6万相手に一歩も引かず、南部の誇りを謳い上げた九戸党。真に不屈の闘士と称え得る先人が郷土に在ることは、私たちの勇気になる。
 見返しは文楽から取材、八岐大蛇退治を題材とした「日本振袖始」。見目こそ麗しい岩長姫は実は醜女、それどころか八岐大蛇に見入られ怨念を体に宿し、美女のクシナダヒメを憎んで食べようとする。岩長姫の狂気と恐怖・一抹の悲しさまでも盛り込んだ、豪壮華麗な見返し。

人形の使い方が斬新過ぎる見返し、これほど見返しというものに驚き、魅了されたことは無かったかもしれない。色合い、人形の角度、牡丹やら岩・松・滝の配置さえ無駄なく効果的で、多少見えづらいことまで工夫ではないかと思うほどであった








下 組羅生門 / 金太郎

日詰まつりに山車が溶け出す夕闇の運行

夜叉の化身は 茨木童子 綱に討たるる 羅城門
(祝い)栄える下組 よき日の祭り 神に捧げた 山車

※南部流風流山車『羅生門』


民芸調で面白くはあるが、雑さが目立ちもする

 羅生門の鬼とはいったい何なのか。うらぶれた羅生門には追いやられた弱者が集い、その中で醜く悲しい争いに明け暮れていたのかも知れず、そのやりきれなさが「鬼」を生んだのかもしれない。ぼんやりとこの山車の鬼の着物を見ていて、なにやらそのように感じ悲しくなった。
 今回は「頼光つながり」として、羅生門の見返しを金太郎(後に渡辺綱とともに頼光四天王となる)としている。

子供の頃に見た下組山車の怖さとか楽しさが、今年の山車にもきちんと顕れているのはうれしかった。この距離感なら、武者の目線が鬼に向いているほうが効果的であろうとは思う







※正式な演題名はこちらで


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